オンラインコンテンツの利用が急速に拡大する中で、Webサイトやアプリなどでのチャットボットの導入も加速しています。
今回は、チャットボットとは何か、どのように活用されているのかといった基礎知識から、導入前の目的の明確化や事前準備、チャットボットの導入までのステップといった具体的な導入方法まで詳しくご紹介したいと思います。
1. チャットボットとは?
Webサイト等を閲覧すると「お困りごとはありますか?」というようなメッセージとチャット画面が表示されている事があると思います。
このように、人間のオペレーターが問合せ対応をしているかのように、チャット形式で問合せが出来る機能が、「チャットボット」と呼ばれるものです。
チャットボットとは、会話のチャット(chat)とロボットのボット(bot)を組み合わせた用語で、チャット形式で質問すると、システムが自動返答するツールを指します。
2. チャットボットの活用方法
チャットボットを使うと、今までは難しかった24時間対応を可能にし、問合せ対応に必要な人材不足の解消、人件費の削減といったサイト運営者側の問題解決にも繋がります。
また、サイトからユーザー側から見ると、問合せをするのは時間や手間を考えると気が進まない、休日や営業時間の関係で出来ない、しかしサイトのFAQ等から探し出すのは大変、といった場合に、気軽に会話形式で質問出来るので、その気軽さは大きなメリットだと言えるでしょう。
では、具体的な活用方法をご紹介していきます。
2-1. ECサイト
コロナ禍でショッピングに行きづらい中で、益々オンラインショッピングの需要は高まってきています。ECサイトは、デパ地下で販売されているような、少し豪華な料理や化粧品はもちろん、クリスマスやお正月といったイベントまで利用シーンは様々です。
特にお歳暮やお中元といった、商品の購入だけでなく、のしや発送といった店員とやりとりをするような商品については、確認したい事項も多いかと思います。また、サイトには良く確認すると書いてあるけど、細かい字で色々書いてあるので探すのが大変だということもあるでしょう。こういった場合に、チャットボットがあると、必要なタイミングで確認しながらショッピングをすることが出来るので、顧客の満足度を高めることが出来ます。
2-2. オウンドメディア
オウンドメディアでもチャットボットが活用されています。コンテンツの配信にチャットボットが使われており、チャットボットとの会話で好きなジャンルや読みたい記事のキーワード等を伝えると、ユーザーに合った記事をピックアップしてくれるというような使い方です。
キャラクターに見立てた可愛いチャットボットもあり、より親しみを持ってやりとりが出来る工夫を凝らしたチャットボットもあります。
2-3. サービスサイト
サービスが複雑な場合、色々質問したい事も多いのではないでしょうか。例えば保険の場合、プランも多く、自分に合ったものを1人で探すのは時間がかかりますよね。しかし、仕事をしていると休日の店舗はお客様が多くて、待ち時間がかかってしまう。そういった場合にも、チャットボットはとても効果的だと言えます。
サービスサイトのチャットボットでは、サービスの商品に関する紹介や、サービス詳細の案内ページへの誘導といった対応が可能です。すぐにユーザーが知りたい情報を提供することが可能になります。
また、チャットボットであれば、どれだけ細かく質問しても気を遣うこともなく、長時間かけて満足するまで質問することが出来て、安心してサービスを使うことが出来ることも特徴です。
2-4. 社内のヘルプデスク
社内のヘルプデスクとしては、やはり管理部門の業務について導入される事例が多いと言えます。具体的には、就業規則に載っているような内容や、新しくリリースされた制度といった内容について、チャットボットに登録するといった使い方が一般的です。管理部門には毎日のように問合せが来るので、簡単な内容についてはチャットボットで十分対応出来ます。
月末月初など、対応する管理部門も質問する社員も忙しいことが多い時期に、相手に気兼ねなく聞くことが出来るチャットボットは、活躍する場面も多いでしょう。
3. チャットボットを作る目的を明確にする
チャットボットを作成する時に重要な事は、
・誰のため
・何のため
・ゴールは?
の3点を整理し、チャットボットを作る目的を明確にすることです。
「誰のため」に作るのかについては、例えばユーザーといっても、ECサイトで商品を検索しているユーザーや、ECサイトを運営する運営会社に興味のあるユーザーなど様々です。
また、何のために作るのかといった目的や、ゴールを明確化しておくことで、チャットボットに設定する内容にブレがなくなり、結果的にチャットボットの効果を高めることに繋がります。
例えば、
・業務効率化
・認知度の向上
・問合せ対応
・離脱率の軽減
といった項目が目的として挙げられるでしょう。サイトの種類や特徴に合わせて設定してみると良いでしょう。
4. チャットボットを作る事前準備
チャットボットを作る前に、
・対応できる人材の確保
・営業時間の明確化
・設置場所の検討
の3点を整理して、無理なく計画的に進行出来るようにしましょう。具体的にご紹介していきたいと思います。
4-1. 対応できる人材の確保
人材不足の削減がメリットの一つであるチャットボットですが、作成時には人材の確保が必要です。人材のスキルは、自社で開発する場合と、作成ツールを利用する場合で大きく変わってきます。
自社で開発する場合には、「自然言語処理」技術を取り入れた開発技術が必要となります。
iPhoneに搭載されているSiriにも使われている技術ですが、高度な最新技術になるため、人材確保にも時間がかかることが想定されます。
自社開発を検討している場合にも、外注や作成ツールの利用を並行して検討することをオススメします。
また、外注や作成ツールを利用する場合にも、初期設定には検討事項も多い為、担当者となる人材を確保する方が良いでしょう。活用方法に合わせて、設定したい分野の知識がある人の他に、チャットボットの専門知識までは要りませんが、ある程度のIT知識がある人を充てるとスムーズに進めることが出来るでしょう。
4-2. 設置場所の検討
目的に合わせて、サイトやアプリのどこに設置するか検討することも必要です。
例えば社内のヘルプデスクとして利用する場合、あまり複雑な内容であれば、直接問合せを受け付けて、人間が対応した方がスムーズで間違いがない場合もあります。
また、ECサイトで利用する場合には、購入時に疑問になった点を質問出来る問合せ対応として利用するのか、商品のメリットを伝えるなど販売促進として利用するのかによっても設定内容は変わってきます。設定内容が異なると、設置場所も当然変わってくるでしょう。
目的を決めて、そこから利用するシーンを想定し、設置場所を検討する形で、ドリルダウンして考えていくと、適した設置場所にたどり着けると思います。
5. チャットボットの作り方
目的の設定や人材の確保、そして設置場所が決まったら、チャットボットの作成を開始しましょう。
・ニーズの調査
・シナリオの作成
・動作確認
・運用と改善
というステップで進めていきます。それでは、一つずつ解説していきたいと思います。
5-1. ニーズを調査
まずは、ニーズの調査です。これが作成を進める上で一番重要な工程だと言えます。
どれだけチャットボットの詳細な設定をしても、ユーザーのニーズに合ったものでなければ失敗に終わってしまうからです。
実際に提供しているサービスやサイトなどの現状分析によって、ニーズを洗い出すのが良いでしょう。
・実際の問合わせ内容をデータ化する
・目的の利用シーンで想定される問合せ内容を洗い出す
・サイトの離脱ポイントから課題を分析する
など様々な方法が考えられます。いくつかの方法でデータを積み上げて、その中から必要な内容を整理しリスト化すると良いでしょう。
5-2. シナリオ作成
ニーズの洗い出しが出来たら、一つ一つの内容について、質問から最終的な回答までの流れを整理していきます。
・選択肢は多くても5つまでにする
・出来るだけ短いやりとりで完結させる
という2点に注意して、ユーザーがストレスなく回答までたどり着けるシナリオを作成しましょう。
5-3. 動作確認
リリース前の動作確認は必ず行いましょう。
・シナリオに沿って質問と回答をチェックする
・基本的な質問に、正しい回答が出来ているかチェックする
・少しイレギュラーな質問に対して、どのような回答をするか確認する
といったポイントをしっかりチェックしましょう。また、1人のテスターだと質問が偏る場合があるので、出来るだけ複数人でチェックすることも大切です。
5-4. 運用と改善
どれだけ時間を掛けてしっかりシナリオ作成や動作確認をしても、運用を開始すると改善点を見つけることが多いです。ユーザーの新たなニーズを発見することもあるでしょう。
運用開始後はユーザーの動きをデータ化して蓄積し、定期的にデータ分析を行って、改善するようにしましょう。
6. チャットボット作成ツール5選
最後にチャットボットの作成ツールをご紹介したいと思います。高い技術を使ったチャットボットですが、無料の作成ツールもありますので、是非チェックしてみて下さい。
6-1. HubSpot
HubSpotが提供しているチャットボットの作成ツールは無料で利用することが出来ます。簡単な質問に回答すると、チャットボットが完成する流れになっているので、コーディングなどは必要ありません。
確度の高いユーザーを担当者に引き継いだり、サポートチケットを作成したり、HubSpotのCRMとも連携出来るので、マーケティングを強化することにも役立ちます。
6-2. hachidori
haridoriでは、LINEやMessengerとの連携が出来るチャットボット作成ツールの提供もあり、実績も7000社と豊富にあることが特徴です。
初期費用と運用費用がかかり有料ではありますが、専任チームがついてしっかりサポートしてくれる体制で運用を開始出来るので、初期段階から効果の高い運用をしたい方にオススメです。
6-3. Repl-AI
Repl-AIは無料で使えるチャットボット作成ツールです。開発画面から簡単にシナリオ作成が出来るだけでなく、雑談機能も充実しているので、自然な会話を実現することが出来ます。
こちらのRepl-AIですが、2021年3月末でNTTドコモが提供するSUNABAに移行することが決まっています。
Repl-AIからCSV出力をすることが出来、そのデータをSUNABAにインポートすることで、SUNABAへの移行が簡単に行うことが出来ます。
6-4. Chat Dealer
Chat Dealerは有料のチャットボット作成ツールです。
導入時から専任スタッフがコンサル対応をしてくれる他に、データ分析機能が充実していて、改善に必要なデータを活用しやすいのが特徴です。
また、チャットボットの無人対応と並行して有人対応のサポートも提供している点がオススメポイントと言えます。
6-5. AI-Q
AI-Qは社内の問合せ対応システムとして提供されています。業務効率化の実現に向けて、顧客情報や必要な資料の検索にかかる時間、社内での問合せにかかる時間の削減を目的としています。また、個人のノウハウをAI-Qに蓄積することで業務の属人化を解消することも可能です。
7. まとめ
いかがでしたか。チャットボットは、ユーザーのニーズにリアルタイムに対応出来、無駄な時間を削減出来る点や、問合せ対応側の人材不足の解消や人件費の削減といった問題も解消出来るので、両者にとってwin-winなツールです。
目的が明確になり、シナリオが出来れば、導入まではプログラミングなしで簡単な設定のみで完了出来るツールも数多く出ています。是非、ご紹介したチャットボットの作り方や重要ポイントをを見ながら、便利なチャットボットの活用を検討してみて下さい。