コロナ禍の中で、インターネットの利用率は増加し、SNSの普及も進んでいます。
一方で店舗での会話など直接的なコミュニケーションの機会が減っており、SNSを通じて、情報を集めるソーシャルリスニングの重要性は、さらに高まっています。
今回は、ソーシャルリスニングとは何か、その概要と企業が行う必要性、目的、メリット・デメリット、ソーシャルリスニングのやり方などを詳しく解説していきます。
分析方法と活用方法、ソーシャルリスニングツールの紹介もしていきますので、今からソーシャルリスニングを始めようと考えている方はぜひ参考になさってください。
1. ソーシャルリスニングとは?
ソーシャルリスニングとは、TwitterやFacebook、Instagram、口コミサイト、ブログのような様々なSNS(ソーシャルメディア)から発信される、ユーザーの情報を収集・分析し、マーケティングの施策検討に活用することを指します。
質問内容が決まってるアンケートとは違い、顧客の率直な意見や感想を集めることができるので、より客観的な意見が集まり、自社の改善点や、新たな魅力に気が付くきっかけになります。
2. ソーシャルリスニングを企業が行う必要性
企業のマーケティング施策の検討に、なぜソーシャルリスニングが有効なのかというと、SNSの利用率が増加していること、購入までの消費者行動が変化していることが理由として挙げられます。詳しく見ていきましょう。
2-1. SNSの利用率の増加
現在、若い世代のほとんどがSNSを利用しており、それに加えて60代以上の年代でも、SNSを利用する人は増えています。
こうしてSNSの利用率が高まる中で、SNSを通じた企業の情報発信や、企業とユーザーとのコミュニケーションは、マーケティング活動の中で重要になってきています。
2-2. 購入までの消費者行動の変化
今まではテレビCMや、販促イベント等の直接的な営業活動が、消費者の購買意欲を高めていましたが、消費者行動についても変化が出ています。
消費者の中には、口コミや商品のレビューを確認してから、商品の購入を決定をする人が増えているという点です。その割合は80%以上と高い数字になっています。
口コミやレビューが消費者の購買決定に大きく影響することからも、ソーシャルリスニングの重要性は高まっていると言えるでしょう。
総務省 平成28年版 情報通信白書 情報資産(レビュー(口コミ)等)
3. ソーシャルリスニングの目的
ソーシャルリスニングは、様々な目的で活用することが出来ます。一つずつご紹介したいと思います。
3-1. ブランドイメージを確かめる
売上高ではなかなか把握出来ないことの一つに、ブランドイメージがあります。
ソーシャルリスニングを行うと、消費者のリアルな本音をキャッチすることが出来るので、会社やサービス・商品についての評価を把握することが出来ます。
ソーシャルリスニングによって収集した精度の高いデータ分析は、ブランディング戦略の検討に大いに役立ちます。
3-2. 口コミや評判を調べる
ソーシャルリスニングでは、商品に対する口コミや評判をリアルタイムにチェックできます。先に述べたように、消費者の購買決定に大きく影響している口コミや評判は、マーケティング担当者には是非こまめにチェックしておいてほしいポイントになります。
3-3. 消費者のニーズを知る
トレンドの移り変わりが早い昨今では、消費者は「今」何を求めているのか、といったところに注目して、正確に把握する必要があります。またサービスや商品によっては、消費者「次に」何を求めるのかを注目する必要があるでしょう。
ソーシャルリスニングでは、こうした「今」のトレンドをキャッチ出来るだけでなく、過去の傾向等を分析して、「次に」求める消費者のニーズに対しても、検討する為のヒントを得られるでしょう。
3-4. 市場動向を把握する
消費者のニーズやトレンドの把握だけでなく、競合や他の業界の動きについても、チェックしておくことはとても重要です。異業種とのコラボ等、新たな取り組みを行うきっかけとなり、新たなターゲット層を取り込める可能性もあるでしょう。ソーシャルリスニングでは、こうした市場全体の動向についても分析することが可能です。
また、自分から検索する情報では、どうしても偏ってしまう情報も、ソーシャルリスニングで正しく分析すれば、客観的な情報を得られるというメリットもあります。
3-5. リスク対策
自社に対する口コミの中で、リスクとなりそうな口コミや評判をチェックしておくことで、リスク回避にも繋がります。消費者の不満や要望に対して、出来る限り改善することで、リスクがチャンスに変わることもあるかもしれません。
3-6. 施策の方向性を検討する
ソーシャルリスニングで得られる消費者のリアルな口コミや評判は、商品改善に役立つだけでなく、キャンペーン施策の検討にも参考になる情報が多いはずです。
トレンドや競合の情報も同時に分析し、より消費者のニーズにマッチした施策検討に役立てましょう。
4. ソーシャルリスニングのメリット
ソーシャルリスニングのメリットは、
・消費者の本音が分かる
・プロモーションの効果が分かる
という2点が挙げられます。詳しくご説明します。
4-1. 消費者の本音が分かる
今までマーケティングリサーチとしては、アンケート調査やインタビュー形式の調査が中心でした。
いずれも質問されたことに対して回答する形式である為、少し焦点のズレた精度の低い回答や、受け身で中身のない回答も含まれていたでしょう。
しかし、消費者が自分から発信したい情報を集めたソーシャルリスニングでは、一つ一つの回答の精度の高さやリアルな本音を収集できるというメリットがあります。
普段なかなか言えない本音は、改善施策検討には大変貴重なものでしょう。
4-2. プロモーションの効果が分かる
広告やキャンペーンを行った際の効果測定にも、ソーシャルリスニングは大変役立ちます。
エンゲージ等から得られる定量データで、どれくらい興味を持ってもらえたのかを把握することが出来ます。
さらに口コミや投稿、リプライ等を細かく見ていくことで、良い反応を得られたのか、問題があればそれは何だったのか、といった評価も確認することが出来るメリットがあります。
5. ソーシャルリスニングのデメリット
できることやメリットといった良い面をご紹介してきましたが、デメリットについてもご紹介したいと思います。
5-1. 分析まで期間が必要
ソーシャルリスニングで分析をする為には、当然ですがデータが必要になります。
例えば、SNS運用を行い、そこから得られたデータで分析をしたいと考えた場合、ある程度の投稿を行い、フォロワーの獲得やエンゲージの獲得する必要があります。
また、精度の高いデータを収集する為にも、データを蓄積する必要があります。
分析の目的によっては、こうしたデータ蓄積に向けた期間を考慮して、スケジュールを必要があり、すぐに分析が出来ないという点がデメリットと言えるでしょう。
6. ソーシャルリスニングの実施するポイント
ソーシャルリスニングの目的やメリット・デメリットをご紹介してきたところで、具体的な実施方法のポイントについてご紹介したいと思います。
6-1. 目的の明確化
先ほどご紹介したように、ソーシャルリスニングは様々な目的で利用することが出来ます。その為、ソーシャルリスニングを行う前に、目的をはっきりさせておかないと、ただデータを集めただけの内容の薄い分析になってしまいます。
今回のソーシャルリスニングの目的は何か、どのようなことが知りたいのか、まずは整理してみましょう。
6-2. 情報収集
目的が明確化されたら、次は情報収集と分析に移ります。
情報収集では、アカウント全体、もしくは投稿内容に焦点を当てたものにするかといった分析対象の設定と、仮説を立てて分析するか、収集したデータから仮説を立てずに分析するかといった分析方法の設定をします。
ブランドイメージであれば分析対象はアカウント全体、といったように目的から落とし込んで考えるとスムーズでしょう。
6-3. 分析・施策の検討
最後に集めたデータを分析し、次の施策を検討します。
データ分析は、後でご紹介する分析方法を、施策の検討には、データ活用方法を参考にしてみて下さい。
7. ソーシャルリスニングの分析方法
ソーシャルリスニングの分析方法としては、
・定量分析
・アカウント分析
・投稿分析
の3つに分けることが出来ます。それぞれご紹介したいと思います。
7-1. 定量分析
定量分析は、いいねやリツイートの数、プロフィールのクリック数、関連キーワードの投稿件数、フォロワー数といった数値を見ていく分析です。
先月のデータと比較したり、前年同月のデータと比較しながら、視点を変えて見ていくことで、より深堀りした分析を行うことが可能です。
7-2. アカウント分析
アカウント分析は、投稿全体の傾向や、どういったフォロワーに投稿に興味を持ってもらえているか、といったアカウント全体の傾向把握を行います。
自社として発信したい方向性やターゲットと合っているか確認し、必要であれば改善の検討をしましょう。
7-3. 投稿分析
投稿分析では、最もエンゲージが高かった投稿や、全体的にエンゲージが高くなる投稿の特徴など、投稿内容に絞って分析します。エンゲージが高くなるキーワードを抽出したり、今後の投稿企画にも役立つでしょう。
8. ソーシャルリスニングの活用方法
データを分析したら、マーケティング施策として活用出来る方法を検討してみましょう。
8-1. ターゲット層と趣味・嗜好の把握
自社の情報を発信したいターゲット層とターゲットの趣味・嗜好に合わせた情報発信の工夫にソーシャルリスニングのデータを活用することが出来ます。
今の投稿に対するエンゲージが高いターゲット層が、自社のターゲット層と一致しているのであれば、今の施策が成功していると言えるでしょう。
反対に、ターゲット層が一致していない場合には、新たなターゲット層として捉えるのか、発信内容を変える等の方向転換が必要なのか、検討することが出来ます。
また、ターゲット層が一致している場合には、よりターゲット層のエンゲージを高められるように、ターゲット層の趣味・嗜好に合わせた投稿内容やキャンペーン等の施策を打ち出すことも有効でしょう。
8-2. ペルソナの作成
ペルソナの作成を行い、ターゲットを1人の詳細な人物像として描くことで、担当者間でのイメージのすり合わせがしやすくなります。
ソーシャルリスニングのデータ分析結果を元にすることで、よりニーズにマッチしたペルソナを作成出来るでしょう。
8-3. 炎上リスクの回避
消費者の本音が引き出せるソーシャルリスニングから、ネガティブコメントも収集することが可能です。
ネガティブコメントを分析することで、リスクの回避に繋がりますので、注目して見ておくことをおすすめします。
9. ソーシャルリスニングツール
最後にソーシャルリスニングツールをご紹介したいと思います。
9-1. Keywordmap for SNS(株式会社CINC)
株式会社CINCが提供しているTwitterの分析・運用が出来るツールです。自社や競合、ハッシュタグ等様々な視点から分析することが可能です。
登録後14日間は無料で使うことができます。
Twitterの投稿のどのようなキーワードに対して反応が高いのかを分析できるので、人々が反応するツイートの傾向を把握することができます。
9-2. Social Insight(株式会社ユーザーローカル)
株式会社ユーザーローカルが提供しているSNS分析・運用ツール。自社のアカウントだけでなく、競合のアカウントも分析することが可能です。運用ツールとして、キャンペーン実施時の当選者の自動抽出機能も搭載されています。
9-3. Brandwatch(株式会社ブレインパッド)
株式会社ブレインパッドが提供しているマーケティング・リサーリのツールです。SNSだけでなく、ニュースやブログ、レビューといった様々なコンテンツを分析することが出来ます。また、AIを活用したデータ分析が出来ることも特徴です。
10. まとめ
ソーシャルリスニングの良さや分析方法、活用方法を感じていただけたのではないでしょうか。
ソーシャルリスニングを活用することで、今まで見えてこなかった顧客の率直な意見を知ることができます。
SNS分析・運用ツールなども多く開発されていますので、ぜひ自社や競合のマーケティングサーチなどに活用してみてください。
ソーシャルリスニングを活用して、顧客の気持ちを分析し、消費者にマッチしたコンテンツの配信や商品企画に役立てましょう。