こんにちは「あつし」です。
私は東京大学大学院を卒業したあと5年間外資系の化学メーカーに勤めて起業・独立し、現在75人の社員がいる会社を経営しています。
今日は、インボイス制度について解説していきます。
インボイス制度を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、ほとんどの人は聞いたことがなくて「なんのこっちゃ?」ということもあるかもしれません。
ですが実はこのインボイス制度、税制の面で国が大きく変えたことになるのですが、ほとんどの起業家さん・経営者さん・個人事業主さんに影響がある制度です。
もうほぼみんなに影響があります。
なので知らないといろいろ問題が起きてきますので、今日はそのインボイス制度について解説していきたいと思います。
特に起業家の人や個人事業主の人で免税事業者となっている人に関してはものすごく大きな影響があるので、今のうちからちゃんと理解して準備をしておく必要があると思います。
インボイス制度はものすごく難しいものなのですが、この記事を最後まで読んでいただくとなんとなく「こういうものか!」とわかって、しかも消費税や税金についてもかなり詳しくなると思います。
ぜひ最後まで読んでいってください。
1. インボイス制度がやばいと言われる理由
それではさっそく、インボイス制度はなにがやばいのか?その理由を解説していきたいと思います。
1-1. 税理士ではないのでポイントだけ解説
その前に、実は私は税理士さんとか税務の資格をもっているわけではありません。
私が知っているのは経営のなかで必要となる税務の知識と経験だけなので、もしかしたら税理士さんのように正確に詳しい内容をご説明できないかもしれません。
ただ実務で使っている者として専門用語を使わずにわかりやすくお伝えできるかもしれないので、「正確で詳しい情報というよりは、とにかくざっくりわかりやすく教えてくれ!」という人はぜひこの記事を読んでみてください。
大体もうインボイス制度がわかっていて「ちゃんと正確に詳しい情報を知りたい!」という方は、ほかの税理士さんの動画や国から出ている資料がいっぱいありますのでそっちを見ていただいたほうが正確かもしれません。
最初に言い訳をしておきます(笑)
1-2. 起業する人、経営する人にはほぼみんな影響がある
そのうえでインボイス制度がやばいと言われる理由についてなのですが、これは冒頭にも申し上げたように起業する人・経営している人のほぼみんなに影響があるものだと思って聞いてください。
1-3. 起業当初や個人事業主は消費税がかからない免税事業者
そしてもっとも大きな影響があるのは起業当初や個人事業主の方で、消費税がかからない免税事業者となっている人たちにはとても大きな影響があります。
この「免税事業者」というもの自体を知らない方も多くいると思うので、免税事業者について簡単に解説していきます。
起業したてのときや個人事業主で売り上げがないとき。具体的には、年間の課税売り上げが1000万以下の場合ですね。
課税売り上げはほとんど売り上げと一緒のようなものなので、ざっくり言うと売り上げが1000万円以下の場合は「免税事業者」という事業者になれるんです。
免税事業者というのはどういうことかというと、消費税を納付しなくてもいい事業者のことを言います。
もっと具体的に説明していきます。
例えば起業したてで、年間の売り上げが「500万円」上がりましたと。
この売り上げ500万円には「10%」の消費税がかかってきまして、売り上げ500万円の10%「50万円」の消費税を税務署に納付する義務があります。
これが意外と大きいんです。
だって500万円の売り上げがあっても50万円を納付しなくちゃいけないんですね。なので手元に残るお金は「450万円」になるのですが、人件費のことや家賃のことや光熱費のことなどいろいろなことを考えていくとなかなか手元に残らない。
けっこう50万円の消費税を納付するのは大き過ぎる。
そこで出てくるのが「免税事業者」という制度でして、要するにこの50万円の納付が免税される。この消費税分は納付しなくてよくなる「免税」という制度があります。
これはどういうものかというと、私の感覚では立ち上げ当初やまだ売り上げが小さいときはいろいろ大変だしお金周りのことも苦労することが多いので、国としても「がんばれ!」と。
「今はつらいときかもしれないけど、売り上げが上がるまでは消費税を免税してあげるから今は事業を大きくするためにがんばれ!」という意味だと思って受け止めていました。
なのですごいありがたい制度ですし免税になることによって消費税分は手元に残るので、これを資金にもっともっと会社を大きくすることができる良い制度だと思っています。
逆に大企業や普通に消費税を払っている事業者にとっても、免税事業者と仕事をすることにはメリットがあります。
こういう免税事業者といった規模の小さい事業者になにか仕事をお願いしたり部品を作ってもらった場合、安く仕上げてくれる可能性があるんですね。
大企業に同じような仕事をお願いするとものすごくお金がかかってしまうのですが、免税事業者になるような小規模な事業者にお願いしたほうが安価でクオリティの良いものができたりすることもあります。
企業側にとっても、免税事業者がいるのはすごくメリットがありました。
ただ2023年10月からはインボイス制度というものが始まりまして、ざっくり言うとこの免税事業者の人たちは課税事業者にならないと商売が不利になってしまう変更があったんですね。
1-4. 2023年10月からは課税事業者にならないと商売が不利になる
この不利になってしまう部分についてはあとから詳しく話すのですが、要するに今まで免税事業者だった人たちは消費税がかかってしまうのでやばいですよね。
企業にとっても免税事業者から安く仕入れられていたものが価格がアップしてしまったり安価に手に入れられなくなってしまう可能性があるのでやばいということがあります。
ざっくり言うとそういった影響があるので、インボイス制度はやばいみたいなことが言われるようになってきています。
2. 消費税の仕組み
ではもう少し詳しく、このインボイス制度についてお話していきたいと思います。
まずは消費税の仕組みからお話していったほうがわかりやすいと思うので、消費税の仕組みについてお話をしていきます。
2-1. 売り上げには消費税の納付義務がある
最初に話したように、基本的に事業をしている事業者は消費税を納税する義務があります。
2-2. 仕入れの消費税分は引かれる(控除)
ただしその納税する金額に関しては単純に売り上げの10%を消費税として納税しなくちゃいけないのではなくて、「控除」という仕組みがあります。
控除をざっくりと説明すると、消費税の納付額を10%よりも少なくなる制度です。
これをもうちょっとわかりやすく説明していきます。
例えば企業が販売店に対して商品を売りました。
そうすると、販売店から商品のお金「1200円」が支払われます。
これは課税対象の売り上げになるので、1200円の10%となる「120円」の消費税を販売店は企業に合わせて支払います。
120円は消費税になるので、企業は自分にもらえるお金ではなくて国に納税しなくちゃいけないお金になります。
なので当然、この120円は税務署に払わなくちゃいけません。
ただしこの120円をまるまる税務署に払うのではなくて、この企業も小さい工場から商品を購入するために「1000円」の商品代を支払っていたとします。
すると企業もこの1000円にかかる消費税「100円」を追加で支払っているので、企業もこの工場に対して100円分の消費税を払っていることになります。
企業側としてはこの100円分の消費税を工場に払っているので、本来納付すべき120円から100円を引いた分の「20円」だけを納税すればいい仕組みになっています。
これが消費税で控除される。言い方としては「120円の消費税から100円が控除されて20円納税する」というかたちになっています。
ここでポイントなのは、小さい工場は企業から消費税「100円」をもらっているので本当は100円を納税しなくちゃいけないことです。
ですが小さい工場は免税事業者になっているので、なんと本来納税するべき「100円」が免税となって納税しなくてもいいことになっています。
3. インボイス制度とは?
それでは、これがインボイス制度によってどう変わっていくのか?これをお話していきたいと思います。
3-1. これまで請求書は誰でも発行できる
「インボイス」というのは日本語にすると「請求書」という意味があるのですが、まさにこの請求書の変更があります。
今までは企業が販売店からお金を払ってもらうために、当然ですが「請求書」というものを発行してお金を振り込んでいました。
企業も小さい工場から請求書をもらって、その分のお金を振り込み・支払いしていました。
そして2023年の10月からインボイス制度が始まりどう変わるかというと、請求書は今までどんな請求書でもよかったんです。
もちろん必要な項目は決まっていたのですが、「こういう請求書じゃないといけない!」という厳格なルールがあったわけではありません。
それが2023年10月からは、「適格請求書」という決まった書式の請求書を発行する必要が出てきました。
3-2. 適格請求書とは?
この適格請求書をきちんと発行する。もしくは適格請求書をもらったらそれをきちんと保存することによって、今まで通り消費税の控除が行われるようになります。
先ほどの例でいうと120円払うはずだった消費税を100円分控除して、20円だけの納税でいいという感じです。
3-3. 適格請求書発行事業者
「適格請求書をちゃんと発行したり保存していればいいんじゃないか?それで問題はないんじゃないか?」というふうに見えがちなのですが、もう1つ2つ話があります。
1つ目は、適格請求書を発行する事業者は「適格請求書発行事業者」として登録しなくてはいけないルールができたことです。
ちなみにこの適格請求書発行事業者の登録は2021年10月から開始されますので、そこで国に申請をして適格請求書発行事業者として登録していないと適格請求書を発行できないんです。
なので今まで普通に請求書を発行していた企業は、みんな適格請求書発行事業者になる必要性が出てくることになります。
これだけであれば「まぁしょうがない。じゃあちょっと手間かもしれないけど、登録事業者になろう…」ということで済むのですが、実はここに大きな裏話がありました。
それが2つ目の話で、適格請求書発行事業者になるのは免税事業者はダメで、課税事業者になる必要があることなんですね。
これはなかなかインパクト・パンチのあるルールです。
これまで免税事業者だった人たちは「もうこれからは免税事業者だとダメです!」と。「適格請求書発行事業者になりたいんだったら、課税事業者になってください!」というルールができたんです。
3-4. 消費税を下げたいなら免税事業者に頼むのはやめよう
先ほどの例で言うと小さい工場は今まで消費税を免除されていたのですが、当然課税事業者になったらその免除がなくなり消費税をちゃんと納税しなくちゃいけない仕組みになります。
そうすると、この免税事業者だった小さい工場に関してはかなり経営を圧迫することになります。
小さい工場としては「これは困った」と。「課税事業者になりたくない…」
課税事業者になるのをやめて、「免税事業者のままでいよう!」ということもできるんです。
こうするとどうなるかというと当然免税事業者なので納税の義務はないのですが、発行できるものが適格請求書ではなくて「請求書」になってしまいます。
なので今度は請求書をもらう側が控除を受けることができなくなってしまい、企業は120円の消費税をまるまる支払わなくちゃいけないことになります。
実際には小さい工場から商品を購入するときに100円分の消費税を払っているのに、企業は控除されないで税務署に120円分の消費税を払うことになると。
企業としては「100円+120円」の二重で消費税を払うことになってしまうので、「これは困った!」という話になってしまうんです。
そうするとどういうことが起こるかというと、「消費税を下げたいなら免税事業者に頼むのはやめて、ちゃんと適格請求書を発行できる適格請求書発行事業者にお願いしよう!」という流れが来るのは間違いないです。
そうすると結果的に今まで免税事業者だった事業者も、仕事をきちんと取るために課税事業者にならざるをえないことが今回の一番やばい点になるのかなと思います。
4. インボイス制度の対応法?
実際に2023年10月にインボイス制度が始まってくるのですが、どういうふうに対処していけばいいのかな?という話をしていきたいと思います。
4-1. 一般消費者や免税事業者と取り引きする
今までは課税事業者と免税事業者の取り引きの話をしてきたのですが、もともと免税事業者と免税事業者間だけの取り引きをしている場合やあまりインボイス制度が関係ない消費者と免税事業者の取り引きをしている場合には、適格請求書を発行する必要性もそこまで大きくありません。
なので免税事業者のままでいることができるようになります。
もし今そういう取り引きが中心に行われているのであれば、これからも免税事業者のままでいて免税事業者と取り引きをする。あまりインボイス制度が関係ないところで取り引きを続けることもできるかなと思います。
4-2. 6年間の経過措置を最大限活用
またそのほかにも2023年10月からインボイス制度が開始されるのですが、「いきなり全部ガラッと大きく変えるよ!」ということではなくて経過措置というものがあります。
2023年の10月1日から変わるのですが、3年間は猶予期間で「80%」は控除できる期間を設けています。
そしてさらに次の3年では、「50%」控除可能な期間を設けています。
つまり免税事業者から今まで通り取り引きを行っていても、80%は控除可能ですよと。その次の3年間は「50%」は控除可能ですよと。
そのさらに先で「控除不可」というかたちになりますよ。という経過措置・猶予期間というものを設けています。
なのでそこの期間を最大限に有効活用するのも1つの手かもしれません。
ただ今までは全額控除だったのが80%になるのは、どうしても損した感じは出てしまいます。
そういう意味ではたとえこの経過措置があったとしても、「やっぱり免税事業者じゃなくて課税事業者にお願いしようかな」「適格請求書発行事業者にお願いしようかな」という流れは出てくるのかなと私は思っています。
4-3. 今から起業して2023年に備える
2023年10月まではまだ時間があるので、今のうちから起業して2023年10月までには売り上げもどんどん上げていって売り上げ1000万円を超える。そしてどっちみち課税事業者にならないといけない状況にもっていくのも、1つポジティブな考えとしてはあるのかなと思っています。
私の場合は起業した当初、売り上げがないときに免税事業者になって税金が優遇されるのはすごい嬉しかったのですが、「早く売り上げを上げて課税事業者になってやる!」という気持ちもありました。
ずっと売り上げが小さいままで「なんとか売り上げを上げないで、税金を小さくしよう…」という気持ちもちょっとはあったのですが、やっぱりそれは事業をする者の気持ちとしてはちょっと違うかなと思いました。
事業をやるからにはどんどんどんどん大きくしていって売り上げも上げていこうという気持ちがあったほうが、全体的にうまくいくこともあると思います。
4-4. まぁいつかは来ること
そう考えるといつかは1000万の売り上げは超えてしまって、課税事業者にならないといけないときが来るんですね。
遅かれ早かれ来てしまうものが早く来てしまっただけの話かもしれませんので、そういう意味でいうと「いつかは来るから1000万円の売り上げを上げられる事業者になるためにどんどんがんばっていこう!」というポジティブな考え方にもっていってもいいのかなと思っています。
4-5. 補助金・助成金にも目を向ける
税金を取られるというとけっこうネガティブな印象があるし、私もネガティブなイメージはあります。
ですがその税金を使って、起業家や新規事業などに支援をしてくれる補助金・助成金もけっこういっぱいあります。
ポジティブなことを考えると、税金を払ってしまうんだけど税金を使って自分の事業を大きくするチャンスがもらえるかもしれない。補助金・助成金をいっぱい探して、自分に使えるような補助金・助成金を有効活用していく考え方もありかなと思っています。
下記の動画で「起業するときに本当に使える補助金・助成金4選」という動画もアップしていますので、補助金・助成金についていろいろ知りたいと思う人はぜひこちらの動画も見てみてください。
5. まとめ
いかがでしたでしょうか。
本日は、インボイス制度についてお話をさせていただきました。
インボイス制度はある意味大きな変更なので「やばい!」ということもあると思うのですが、ポジティブに考えるといつかはかかるようになってしまう消費税が早くかかるようになってしまうだけのことなのかなと思います。
詰まるところを言えば事業を大きくして売り上げをしっかり立てていき、消費税を支払っても問題ないくらいのものにしていったほうがポジティブなんじゃないかなと思います。
なので今日はインボイス制度について詳しいお話をさせていただきましたけど、しっかり準備をして制度変更があったあとも問題なく事業が成長していくような体制をとっていくことが大事なのかなと思います。
今日は私の感覚も含めて、なるべくわかりやすくお話をさせていただきました。
それでは今日はこの辺で失礼します。