現在、どのような企業においても、インターネットを利用した施策を事業に取り入れることが欠かせなくなっています。もはや、Webを使いこなせない企業に未来はないと言っても過言ではないでしょう。
そんな中で注目を集めているのが、「グロースハッカー」という職種。聞き慣れない言葉かもしれませんが、今後企業にとって、グロースハッカーの重要度は無視できないものになるでしょう。
この記事では、グロースハッカーの仕事内容や必要なスキル、事例などについて徹底解説していきます。これさえ読めば、グロースハッカーについての基礎知識は完璧です。
- Webマーケティング担当者
- ITを活用して事業を回していきたい人
上記のような人は、ぜひ参考にしてみてください。
1. グロースハッカーとは何か
グロースハッカーとは、2010年にアメリカQualaroo社のショーン・エリスによって提唱された職種のこと。
グロースハッカーはかなり広義の意味を含む言葉なので、その役割を一概に表すことは難しいです。ですが、あえて一言で言うなら、「企業のサービスや売り上げを成長させるために、さまざまな施策を立案・実行する職種」となります。
グロースハッカーの仕事内容は極めて流動的。企業の成長のためであれば、複数の職種を横断するような役割を担うこともあります。
また、ITを中心に施策を展開するのも、グロースハッカーの特徴の一つ。それもそのはず、グロースハッカーが世界で初めて流行した場所は、ITの中心地であるシリコンバレーなのです。
2. グロースハッカーの仕事内容
グロースハッカーの主な仕事は以下の通り。
- PDCAを回し、新しい手法を確立する
- PV数向上のための施策を考える
- ユーザーの声を集めて分析する
- 企業視点から、サービスの優先順位を決める
- SEO対策、広告運用などのWebマーケティング施策
- プログラミングやデザイン
上記以外にも色々な業務が考えられますが、全てに共通する特徴は以下の3つです。
- サービスや製品の成長が目標
- 時にはシステム開発や製品作成にも関わる
- 定量的なデータに着目してPDCAを回す
3. グロースハッカーとWebマーケティングの違い
グロースハッカーの仕事内容を見て、「Webマーケターとほとんど同じじゃない?」と感じた方もいるのではないでしょうか。
実は、グロースハッカーはWebマーケターの発展版。そのため、両者は本質的な部分では共通点が多いのです。
ここから、グロースハッカーとWebマーケターの違いを、以下の3つの観点から詳しく解説します。
・業務範囲
・革新度
・対象製品
3-1. 業務範囲
一つ目の違いは「業務範囲」です。
Webマーケターは、Web上のデータを元に広告やコンテンツを改善して、売り上げの拡大を図っていくのが主な役割。あくまで完成させた商品の「見せ方」を考えて施策を実行していきます。
一方、グロースハッカーはWebマーケターの役割に加えて、商品の開発にまで携わります。時にはプログラマーとしてコードを書き、時にはデザイナーとして広告デザインを考えることもあります。
特定の業務範囲に縛られず、企業の成長のためであればなんでもやるのがグロースハッカーだというわけです。
3-2. 革新度
2つ目の違いは「革新度」です。
Webマーケティングの世界には、安定して結果を出せる方法論が確立されており、その理論に従って施策を回していきます。
しかし、グロースハッカーは未知の方法で課題解決を目指します。これは、従来の手法よりも効果が強い方法を探り、企業としての独自の強みを生むためです。
そのため、失敗の数はグロースハッカーの方がはるかに多くなるでしょう。幾多の失敗を乗り越えて、革新的な施策を作り出すことは、グロースハッカーにとって一番やりがいのある要素です。
3-3. 目的
Webマーケターの仕事の目的は、既存製品の売り上げを伸ばすこと。
一方、グロースハッカーの目的は、会社のあらゆるものの成長を促進することです。グロースハッカーは売り上げだけでなく、製品の質や業績にまで踏み込み、成長の加速を目指します。
イメージとしては、マーケターは上流工程であるのに対して、グロースハッカーは上流も下請けの仕事もこなすという感じです。自分で考え、自分で分析し、自分で手を動かす。とにかくさまざまなことに関わり、企業全体の成長をサポートしていきます。
4. グロースハッカーに必要なスキル
グロースハッカーの役割の広さと目的を見て、「大変そうな仕事なんだな」という印象を持った人も多いはずです。
たしかに、グロースハッカーは比較的タフな職種で、責任も非常に重いです。しかし、グロースハッカーに必要なスキルは、後天的に身につけられるものも多いのです。
グロースハッカーに不可欠なスキルは、主に以下の5つ。
- PDCAを回し続けるスキル
- クリエイティビティ
- Webマーケティングスキル
- 開発力
- 熱量
順番に見ていきましょう。
4-1. PDCAを高速で回すスキル
グロースハッカーにとって最も重要なスキルは、「PDCAを高速で回す力」です。
前述した通り、グロースハッカーは未知で革新的な手法を生み出し、ビジネスを推進する職種です。ですが、革新的な手法はすぐに作り出せるわけではありません。そこにたどり着くまでに、何回も何回も施策の実行と改善を繰り返す必要があります。
そのため、PDCAをいかに効率的かつ高速に回せるかが、グロースハッカーにとっての重要な課題になります。
また、これに伴い、失敗に対する忍耐力も必要です。何度失敗してもくじけずに、成功への糸口を探し続ける力がある人は、グロースハッカーに向いているかもしれません。
4-2. クリエイティビティ
2つ目のスキルは「クリエイティビティ」です。
既存のWebマーケティングにはない手法で課題を解決するには、豊かな創造力・クリエイティブな思考が欠かせません。
4-3. Webマーケティングスキル
3つ目のスキルは「Webマーケティングスキル」です。
グロースハッカーは、コンテンツマーケティングや広告運用はもちろんですが、商品開発に関わる際などのさまざまな局面で、マーケティングスキルが必要になってきます。
グロースハッカーは、Webマーケターの延長線上に存在する職種。そのため、グロースハッカーにとって、Webマーケティングスキルは全ての能力の土台になるものです。
そもそも、Webマーケティングに関する知識がないと、PDCAを回すことは不可能ですよね。グロースハッカーになりたい人は、まずはWebマーケティングの知識を身につけることに労力を注ぎましょう。
4-4. 開発力
開発力も、グロースハッカーにとって重要なスキルです。
具体的には、システム開発やITサービス開発のためのプログラミングスキルです。ITを使いこなして事業の拡大を目指すグロースハッカーにとって、プログラミングスキルは大きな力になってくれます。
とはいえ、開発力は必須ではありません。あくまで最重要なのは前述の3つですので、開発力の優先度を高く見積もりすぎるのは逆に危険です。
その業務範囲の広さゆえに、グロースハッカーによって得意分野は異なるもの。あえて開発力を捨てて、他のスキルを尖らせるのも良いでしょう。
4-5. 熱量
グロースハッカーの責任や業務量は非常に大きいため、生半可な気持ちで就ける職種ではありません。最終的に重要になるのは、「会社を成長させたい」という強い気持ちと熱量です。
ここまで説明してきた通り、グロースハッカーの業務範囲と責任の大きさは、マーケターとは比べ物になりません。スキルも大切ですが、最後は気持ちの強さが重要になってくるでしょう。
5. グロースハッカーにより生まれたサービス
グロースハックによって生み出されたサービスを見ていきましょう。
今回は、以下の2つのサービスを紹介します。
- Dropbox
- Airbnb
5-1. Dropbox
Dropboxは、世界最大級のオンラインストレージサービス。広告をほとんど使わずに、40億円もの価値を作り出していると言われています。
Dropboxの開発陣が注力したのは「会員登録と共有のしやすさ」。一般的に、Webサイトには大量の情報が掲載されていますが、Dropboxはサインアップ画面以外の情報を極力排除しました。
なぜなら、会員登録さえしてもらえれば、ユーザー数を拡大できると考えたからです。
このように、注力する要素の優先順位をつけ、自ら開発をしていくのは、まさにグロースハッカーの中心的な役割です。
5-2. Airbnb
Airbnbは、宿泊可能な家の提供者と旅行者をマッチングさせるサービスです。類似したサービスは他にはほとんどなく、まさに革新的なプラットフォームといえます。
「世界192ヶ国でホームステイができる」がコンセプトのAirbnbにとって、ユーザーの数を増やすことは至上命題です。
そこで初期Airbnbが注力したのは「友人紹介」。友人紹介とインセンティブを結びつけることで、ユーザー数の拡大を目指しました。
この結果、Airbnbは創業からおよそ7年で、1700万人ほどのユーザーを獲得するのに成功したのです。
その他にも、Airbnbは以下のようなグロースハック戦略を実行しています。
- 国ごとに施策を最適化
- 国々のフォトグラファー、ビデオ製作者にコンテンツ作りの協力を依頼
- オフラインをメインにしたマーケティング活動
6. グロースハッカーの年収
グロースハッカーは今ITの分野で最も注目されている職種で、その市場価値はこれからも高まっていくことが予想されます。
そこで気になるのは、グロースハッカーの年収についてではないでしょうか。
グロースハッカーはかなり新しい職種なので、信頼度の高いデータはまだありません。そこで、求人情報を元に、おおよその年収を調べてみました。
- 全体平均……500~600万円
- 経験者、熟練者……700~1500万円
グロースハッカーは高いスキルと豊富な経験が必要となる職種なので、年収は比較的高めの傾向が見られます。
7. グロースハッカーになるには
卓越したスキルや施策の実行力が要求されるグロースハッカーは、未経験からいきなりなれる職種ではありません。
グロースハッカーがまずすべきなのは、企業のマーケターやプログラマーとして経験を積むことです。両者とも、需要の大きさに対して人材が圧倒的に不足しているので、市場価値の高いスキルを身につけられます。
ここで重要なのは、マーケティングやプログラミング開発をメイン事業としている会社に就職すること。
グロースハッカーは上流工程から指示を出す役割ではなく、さまざまな領域で実際に手を動かしていく職種です。そのため、マーケターやプログラマーとして、重要な部門に直接関われるような会社に就職するのが効果的でしょう。
8. まとめ
ここまで、グロースハッカーの基礎知識について解説してきました。要点は以下の通りです。
- グロースハッカーは、会社やサービスなどの成長を加速するための職種
- グロースハッカーの業務範囲は広く、豊富な知識と経験が必要になる
- グロースハッカーになりたい人は、まずはマーケターやエンジニアとして経験を積む
今後、グロースハッカーの市場価値は間違いなく上がっていきます。会社にグロースハッカーを置きたい人や、グロースハッカーになりたい人は、一分一秒でも早く動き出すべきでしょう。
グロースハッカーに興味のある人は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。