STP分析と聞いて、「STPって何?」と思う人から、「なんとなくどんなものか分かるけど、具体的にどうやって分析するの?」と思う人までいるかと思います。
こちらの記事では、
- マーケティング勉強し始めでまだよくわかっていない
- STP分析のやり方について知りたい
- STP分析をしなければならないけど、何に役立つの?
と思っている方に向けて、STP分析とはどのようなものなのかという基本的なことから、その重要性やメリット、分析方法について解説していきます。
1. STP(エスティーピー)分析とは
STP分析は、「マーケティングの神様」と呼ばれ、マーケティングに関わる上で必ず知っておくべき人物、フィリップ・コトラーが提唱した数あるフレームワークのうちの1つです。
Segmentation(セグメンテーション)、Targeting(ターゲティング)、Positioning(ポジショニング)、という言葉の頭文字をとってSTP分析と名づけられました。
- Segmentation(セグメンテーション)-市場を細かいグループに分類する
- Targeting(ターゲティング)-分類した中でどのグループに狙いを定めるのかを決める
- Positioning(ポジショニング)-自社がどのような立ち位置にいるのか明確にする
欧米ではメジャーなマーケティングフレームワークで、日本の企業も導入しているケースが多くみられます。
2. STP分析を行う目的
STPの目的は、自社の強みを生かすことができるポジションを探し出し、効率よく売上を伸ばすことです。
そのために、同様のニーズを持った市場を細分化して考え(セグメンテーション)、その細分化した市場の中でどの市場をターゲットとし、どのようなポジションから商品やサービスを販売するかということを明確にすることを行います。
3. STP分析の重要性とは
そもそも、基本的なマーケティングフレームワークは7つあります。
1.環境分析…自社の内部と外部の2つに関して、事実関係を整理して戦略の方向づけを行うこと。
①PEST分析
②5F分析
③3C分析
④VC分析
⑤SWOT分析
2.戦略立案…市場の細分化をし、ターゲットを選び、どのような角度からアプローチするのかを決めること。
⑥STP分析
3.施策立案…どのような販売戦略を取るのか明確にすること。
⑦4P
各フェーズで行うべきフレームワークは異なり、STP分析は環境分析と施策立案の間で行うべきプロセスです。
そのため、せっかく環境分析を丁寧に行っても、STP分析がきちんとできていないと、その後の施策がうまく立てられないということになってしまいます。
そうなると商品の売り上げが伸びないことに繋がってしまうため、STP分析は慎重に行うべき非常に重要なプロセスと言えます。
4. STPの分析方法について
それでは、次にSTP分析の具体的な方法についてご紹介していきます。
S、T、Pの順にご紹介をしていきますが、必ずしもこの順番通りにやらなければならないということではありません。取り組みやすい部分から行うのがおすすめです。
4-1. STP分析方法①Segmentation(セグメンテーション)
セグメンテーションとは、市場を細かいグループに分類することです。
似たようなニーズを持っているなど、さまざまな切り口でグループ分けをしていく必要があります。
なお、この市場を細分化する際に利用する切り口のことを「変数」と呼びます。
変数として利用される一般的なものに、デモグラフィック(人口統計的変数)、ジオグラフィック(地理的変数)、サイコグラフィック(心理的変数)、ビヘイビアル(行動変数)の4つがあります。
それぞれの具体的な説明は以下の通りです。
1.デモグラフィック(人口統計的変数)
デモグラフィック変数は、人口統計により得られる特性のことを言い、好みなどで変わることのない基本情報です。
具体的な項目としては、
・年齢
・性別
・家族構成
・学歴
・所得
・国籍
・宗教
などが挙げられます。
総務省統計局などが発表するデータを利用できるため、比較的手に入れることが簡単なデータであり、よく活用されています。
また、消費者ニーズやサービスを使用する頻度に結びつくことが多いため、重要な変数であると言えます。
例えば、高級路線の自動車を販売したいと仮定したときに、所得が低いグループをターゲットにはしないと思います。
所得の水準ごとにグループ分けをして考え、どのグループであれば売りたい自動車のニーズがあるかということを考えていくのです。
2.ジオグラフィック(地理的変数)
ジオグラフィック変数は、地理的な条件に頼った特性のことです。
具体的な項目としては、
・国
・地域
・都市
・人口密度
・気候
・文化
・交通機関の発達度
などが挙げられます。
こちらもデモグラフィック変数と同様に、地理に紐づく基本的な情報のため、客観的なデータとして入手することが可能。国の調査結果などを利用できます。
例えば、デザインを重視したスタイリッシュな自動車は、道路の舗装が間に合っていないような地域ではなく、都市部に住む人々をターゲットした方がニーズにマッチする可能性が高くなります。
3.サイコグラフィック(心理的変数)
サイコグラフィック変数は、人間の心情に基づいた特性のことです。
具体的な項目としては、
・価値観
・ライフスタイル
・パーソナリティー
・購入動機
などが挙げられます。
デモグラフィック変数やジオグラフィック変数が同じような人物がいた場合でも、価値観や性格によって全く異なる行動を取ることがあります。
日常生活で考えると当たり前のように思えるかもしれませんが、消費行動が多様化していくうちに、これをマーケティングに落とし込み変数の1つとして考えられるようになりました。
しかし、インターネットで購買行動を容易にデータ化できるようになった21世紀以降では、以前よりもこの変数を重要視することは少なくなりました。
サイコグラフィック変数は、客観的なデータとして入手することは難しいため、アンケート調査の結果やヒアリングをもとに分析します。
4.ビヘイビアル(行動変数)
ビヘイビアル変数は、個人の行動に基づいた特性のことです。
具体的な項目としては、
・購入頻度
・購入プロセス
・買い替えタイミング
・使用用途
・購買意欲
などが挙げられます。
ビヘイビアル変数の特徴としては、他の変数と比べて角度が高いということです。
インターネットが普及したことにより、ネット上で情報収集をしやすいことも、もう1つのメリットです。
例えば、年齢や性別で区分しただけの場合と、ネットで「中古車」と検索した人という区分では、後者の方が自動車に興味がありそうということがより判断しやすいと思います。
4-2. STP分析方法②Targeting(ターゲティング)
ターゲティングは、分類した中でどのグループに狙いを定めるのかを決めること。細かく分類したグループの中から絞っていく作業をします。
ターゲティングのパターンには、大きく分けて3つあります。
1.無差別型マーケティング
グループ分けした市場の違いを全て無視して、同じ商品を販売する手法です。資金力がないと実行するのは難しく、一般的には大企業で見られることが多い手法です。
2.差別型マーケティング
セグメンテーションで分類したグループのうち、ピックアップしたいくつかのグループに、それぞれの特性にマッチする商品を販売する手法です。ニーズに合わせて複数の料金プランを設定するなど、多くの企業が取り入れています。
3.集中型マーケティング
その名の通り、1つの限られた市場に集中する手法です。資金があまりない企業であっても導入しやすい手法と言えます。ニッチな商品やサービスなどを提供していると、大多数の人々には興味を持ってもらえなくても、特定の層には刺さるということがあります。
4-3. STP分析方法③Positioning(ポジショニング)
ポジショニングは、市場の中で自社がどのような立ち位置にいるのか明確にすることです。
その市場に競合がいるのかどうかを調査し、さまざまな指標の中から2つを選び、ポジショニングマップを作成して分析していくのがおすすめ。
指標を変えながらいくつかポジショニングマップを作成してみると、自社の強みとなるポイント見つけることができるはずです。
この際、同時に複数の指標で比較しないように気を付ける必要があります。
なぜなら、比較するデータが多くなり過ぎてしまうと、見落としがあったり、複雑すぎて正確に判断できなかったりという問題が起こる可能性があります。
指標として利用できる具体的な項目をいくつかご紹介します。
- 価格
- 品質
- 大きさ
- 重量
- ビジネスか個人か
- オンラインかオフラインか
他にもたくさんの指標が考えられるかと思います。自社が大切にしているポイントや強みとなりそうなものを指標として、ポジショニングマップを作成してみましょう。
5. STP分析を行って得られるメリット
STP分析を行う重要性については、マーケティングプロセスの中核であると既にご説明をした通りですが、他にはどのようなメリットがあるのか3つご紹介します。
5-1. 市場規模やニーズを予め整理できる
市場をグループ分けして考えることで、ターゲットとすべき対象が明確化されます。そうすると、その市場規模はどのくらいのものなのか予め知ることができます。
また、細分化したそれぞれの市場でニーズにマッチするかどうかの検討をすることで、改めて自社製品やサービスがどのようなニーズを満たせるのかを整理することもできます。
5-2. ペルソナを設定する際に役立つ
メリットの2つ目は、ターゲティングによりさまざまな変数でターゲットを絞り込めることで、ペルソナを作成する際に役に立つということです。
ターゲティングで分析した結果がそのままペルソナになるのではないか?と考える人もいるかもしれませんが、それは違います。
ペルソナとはターゲットとなる1人の人物モデルを設定すること。ターゲティングを基にして考えることができるため、何もない状態から分析してペルソナをつくるよりは、格段につくりやすいと言えます。
5-3. 自社商品やサービスの強みを理解できる
ポジショニングを行うことで、市場の中での立ち位置が把握できたと思います。そしてそれは、競合がいた場合でも勝負することができる強みでもあったはずです。
同じような商品やサービスは他にもある、それをどう差別化して顧客に届けるかということを漠然と考えるだけでは、答えにたどり着くのは難しいです。しかし、ポジショニングを行うことによって、競合と差別化できるポイントを探し出し理解することができます。
6. STP分析の事例
ここまで、STP分析とは何かということや分析方法を解説してきましたが、説明だけではなかなか理解しにくいと思います。
そこで、具体的な事例をいくつかご紹介していきます。
STP分析の重要性やどのように役立てれば良いのか、イメージがより具体的になるはずです。
6-1. STP分析の事例①マクドナルド
セグメンテーション:価格、材料の品質、提供スピード
ターゲティング:安い価格でいかに早く提供できるか、食材にこだわらない
ポジショニング:低価格で提供が早く、特定の年齢をターゲットにはしない
食材にはこだわっておらず、品質も一定の水準はクリアしているものの高品質のものを提供しているわけではないため、ターゲットもそこそこの品質で安いものを早く食べたい人と言えます。
6-2.STP分析の事例②ユニクロ
セグメンテーション:カジュアルかフォーマルか、トレンドかベーシックか
ターゲティング:カジュアルでベーシック志向の人
ポジショニング:低価格かつ高品質な商品を販売する企業
アパレルメーカーは、これまで年齢や職業など細かい指標でセグメンテーションしていました。しかしユニクロは、それらを使わず生産する商品を限定する形で、指標を決めたのです。
6-3. STP分析の事例③コカ・コーラ
セグメンテーション:コーラだけでなく、炭酸飲料やお茶など市場に合わせた商品の提供が可能
ターゲティング:差別型マーケティングを主として、無差別型マーケティングも行っている
ポジショニング:昔からの親しみのある味を貫く
かつてペプシとコカ・コーラが競い合うコーラ戦争が起こりました。長年2位だったペプシが革新的なPRでコカ・コーラを上回ったのです。コカ・コーラは何とかしようと、より美味しい新たなコーラを生み出しましたが、失敗。元の味に戻したところ首位に返り咲いたのです。
7. STP分析のテンプレート
ここまでSTP分析の方法についてご紹介してきました。
最後にSTP分析に使用できるテンプレートをご紹介します。
セグメンテーションは、2つの指標を決めそれぞれにどのような特徴を持つ人物だと考えられるか、ということを記入していくとイメージが湧きやすく進めやすいと思います。
こちらが、セグメンテーションのテンプレートです。
ターゲティングは、記入したセグメンテーションのシートを使用し、どのグループを選択するか決めると良いでしょう。
ポジショニングはポジショニングマップを使用します。
2つの指標を決めて、他社がどこに当てはまるのか、自社はどの立ち位置にいるのかを記入していきます。
こちらがポジショニングマップのテンプレートです。
8. STP分析をしっかり行うと、自社の強みを明確化できる
STP分析とは、セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニングと3つの分析を行うこと。
市場の細分化し、狙いを決め、市場の中での立ち位置を明確化するということでした。
商品やサービスを効率よく得るという目的のあるマーケティングの中で、戦略を立てる際に行う重要なプロセスです。
しっかりと丁寧に分析を行うことで、そのあとの施策立案に生かすことができます。