「スポーツマーケティング」とは、スポーツを利用して新しいビジネスを生み出す一連の営みのこと。実は、スポーツとマーケティングの相性は抜群なのです。
この記事では、スポーツマーケティングの基礎知識や特徴、成功のポイントなどについて徹底解説していきます。
- 集客力をあげたいスポーツチームの運営担当
- スポーツを活かして業績を上げたい企業
- スポーツマーケティングについて詳しく知りたい人
上記のような人は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
1. スポーツマーケティングとは?定義を紹介
スポーツの力を利用したマーケティング活動を「スポーツマーケティング」と呼びます。
そもそもマーケティングは、自社の商品・サービスの売上を上げるために行われる施策のこと。この目的を達成するために、社会への影響力が大きいスポーツを掛け合わせてビジネスを展開していくのが「スポーツマーケティング」です。
また後述しますが、スポーツマーケティングを行う主体は主に2種類あります。
- スポーツチームの運営
- 一般企業
スポーツチームの運営の場合は、より多くの人にチームのファンになってもらうこと。
一般企業の場合は、スポーツファンに効率的に商品を訴求していくことが、マーケティングの目的になります。
2. スポーツマーケティングの歴史
とはいえスポーツは、最初からマーケティングとの相性が良かったわけではありません。
スポーツがどのように変化してきたのかを確認してみましょう。
2-1. 「見る」から「見る + する」へ
戦後ー昭和晩期の間、スポーツはあくまで「観戦する」ものであり、「自分たちでするもの」ではありませんでした。
やがて、エンタメとしてのスポーツにたくさんのスポンサーがつくようになってきます。スポーツの発展に、企業が波乗りを始めたのです。これこそが、スポーツマーケティングの始まりだったといえるでしょう。
そして、90年代より、自分でもスポーツをやり始める人が急増。プロ野球やW杯の開催が、人々に大きな影響を与えたといわれています。
2-2. ビジネス的な価値の向上
スポーツをする際は、スポーツ器具やシューズ、専用のウェアが必要ですよね。
スポーツを始める人が増えたことで、スポーツ用品の需要が高まり、お金の動き方が決定的に変わったのです。そして、スポーツのビジネス的価値が高まったことで、スポーツを利用した戦略を打ち出す企業も増加しています。
たとえば、「憧れの選手が使っているから」という理由で特定の企業のスポーツウェアを選ぶ人も多いのではないでしょうか?これこそ、スポーツマーケティングにとって狙い通りの購買行動です。
3. スポーツが持つ「力」とは
冒頭で、スポーツマーケティングのことを「スポーツの力を利用したマーケティング活動」と表現しました。では、スポーツが持つ「力」とは、具体的にはどのようなものでしょうか?
スポーツの力は、主に以下の3つが考えられます。
- 圧倒的な集客力
- 感情面のコミットメントの強さ
- 選手の影響力
順番に見ていきましょう。
3-1. 力① 圧倒的な集客力
スポーツには、圧倒的な集客力があります。たとえば、東京ドームには1試合につき約5万人が集まります。この人数が年間約70試合に訪れるわけですから、スポーツの集客力は驚異的だといえるでしょう。
持続的に大量の人数を集められるスポーツは、当然マーケティングとも相性がいいといえます。たとえばスタジアムに広告を出せば、多くの人に商品を認知してもらえます。
3-2. 力② 感情面のコミットメントの強さ
人々のスポーツへの熱量の高さは、エンタメの中でも随一です。
- 一年の間に同じスタジアムに何十回も足を運ぶ
- 好きな選手のグッズは全て購入する
- 日本代表を応援するため、時には海外にまで足を運ぶ
上記のような人は決して珍しいわけではありません。それほど、スポーツが人々を引き付けて熱狂させる力は強大なのです。
そして、コミットが強い人が多いということは、それだけ多くのお金がスポーツに費やされているということを意味します。彼らを顧客として考えれば、ビジネスのチャンスはいくらでもありそうですね。
3-3. 力③ 選手の影響力
アスリートの中でも、特に「スター選手」がファンや社会に与える影響力はとても大きいです。
みなさんの中にも、好きな選手の影響でスポーツを始めた、という人はいるのではないのでしょうか。
また、近年はバスケットボールの八村塁選手、テニスの大坂なおみ選手などの日本人アスリートの活躍が目立ちます。彼らのプレーに対して、日本人はまるで自分のことかのように熱狂します。
そんな、影響力の高いアスリートを活かして、ビジネスの促進を図ることが可能です。
4. ビジネスにおけるスポーツの位置付け
スポーツを、食品や便利グッズのような「消費財」と同じように扱うのは無理があります。
なぜなら、人々がスポーツに求めるものは「実用性」ではなく「精神的な充足感」だからです。よって、ビジネスの観点から見ると、スポーツは「エンターテイメント」の領域に位置付けられます。
エンターテイメントは、スポーツ以外にも番組やテーマパーク、映画など、色々なものがありますよね。スポーツマーケティングの成功事例を研究する際は、このようなエンタメの事例を対象にしましょう。
5. スポーツマーケティングの成功のコツ
スポーツが持つ大きな力について見てきました。しかし、スポーツファンに闇雲にアプローチするだけでは、ビジネスは成功しません。
スポーツマーケティングを成功させるためのコツをまとめたので、順番に確認していきましょう。
5-1. スポーツチーム・運営団体の場合
スポーツチームや運営団体は、新規ファンの獲得とコミットの強化を目指してマーケティングを行っていきます。
ファンの増加・コミットの強化は、チームの運営資金や選手のモチベーションに関わる大切な要素。ぜひ、下記のコツを意識して効果的なマーケティング施策を考えてみてください。
1. ① SNSでの拡散を狙う
1つ目のコツは、SNSで映える要素をスポーツに取り入れてみることです。
SNSの拡散力には目を見張るものがあります。特に、若者の流行のほとんどはSNSを起点に発生しているといっても過言ではありません。
また、SNSは「口コミ機能」としての役割も担っています。
人は、自分が好きなものや感動した体験を、周りの人に伝えたくなる習性を持っています。そしてSNSは、何かを伝えたり拡散させたりするのにピッタリのツールです。
これらのようなSNSの能力を活かせば、スポーツの魅力をより多くの人に届けることが可能です。「どのようなものがSNSでウケるのか?」という視点で、施策を考えてみるのがおすすめです。
2. ② 場外のファンも楽しめるコンテンツを
スポーツの魅力が発揮されるのは、試合中だけではありません。
選手についてのコンテンツ発信やファンが参加できるイベントの開催など、スタジアムに行かなくても楽しめるような施策を考えてみましょう。
たとえば、コロナ渦の現在、スマートフォンアプリを利用したコンテンツ提供に力を入れる団体が増えています。このようなサービスにより、ファンは家にいる時でもスポーツを楽しめるようになりました。
スポーツには、どんな状況下においても人を結びつけたり、夢中にさせたりできる力があります。この力を活かさない手はありません。
5-2. 一般企業の場合
一般企業の場合は、自社の製品やサービスを、スポーツを利用して販促していく方法を考えていく必要があります。
ポイントは、「スポーツはファンの感情面に訴求するエンタメ」という事実を意識すること。スポーツを活かすのであれば、商品のプロモーションも顧客の感情面にアプローチするものであるべきです。
1. 製品の質より「意味付け」を意識する
前述した通り、スポーツに「実用的な機能」を求める人はいません。
ですから、スポーツマーケティングをする際、商品の実用性の高さをアピールしてもムダです。スポーツファンに商品を売りたいのであれば、感情面に訴えかけるような施策を用意するべきなのです。
そこで意識してほしいのが「意味付け」です。同じ商品でも、使用する意味をズラすことで、感情面への訴求力が変わってくるのです。
たとえば、「この商品の購入代金の一部は、〇〇球団の運営費に使われます!」と言われたら、その球団のファンはどう感じるでしょうか。
たとえその商品が必要なくても、「好きなチームの応援になるなら」という理由で手を伸ばしてくれるかもしれませんよね。
このように、商品を使用する意味をスポーツに紐づけてあげることで、スポーツマーケティングの効果が向上します。
6. スポーツマーケティングの成功事例
スポーツマーケティングの成功事例を見てみましょう。必ず参考になる部分があるはずです。
6-1. 事例① 広島東洋カープ
「カープ女子」という言葉に聞き覚えがある人は多いのではないでしょうか。
広島東洋カープは、若い女性をターゲットにして、スポーツマーケティングを大成功させた事例です。
かつては「野球は男性が楽しむもの」というイメージが強かったため、女性の野球ファンが生まれづらい状況でした。また、野球ファンの女性も、野球が好きなことを周りに公言しづらかったという背景があります。
そんな中、カープは「カープ女子」という合言葉を使い、女性への訴求を開始します。可愛らしいグッズの販売や女性向けイベントの開催はとても好評で、女性ファンの急増につながりました。
6-2. 事例② B-League
SNSをフル活用した施策を展開しているのが、バスケットボールリーグの「B-League」です。
SNS映えするコンテンツ発信と、ファンを巻き込んだオンラインキャンペーンがB-Leagueの施策の特徴。これらの施策は、特にデジタルマーケティングの導入を考えている人にとって非常に参考になるものです。
7. スポーツマーケティングを支援する企業
スポーツに特化したマーケティング事業を運営している企業を紹介します。
7-1. ① 博報堂DYスポーツマーケティング
博報堂DYスポーツマーケティングは、大手広告代理店である博報堂の関連会社です。
博報堂が幅広い広告を扱っているのに対して、博報堂DYスポーツマーケティングはスポーツに特化したプロモーション活動を展開しています。
7-2. ② 株式会社インターナショナルスポーツマーケティング
インターナショナルスポーツマーケティングは、Webマーケティングとスポーツを掛け合わせた施策を行う企業です。
マーケティング事業以外にも、「Sports Memorial Lab.」のような自社サービスも運営しているのが特徴です。
7-3. ③ スポーツブランディングジャパン株式会社
スポーツブランディングジャパンは、スポーツに関する幅広い事業を展開している企業。マーケティング施策のサポートも行っています。
8. スポーツマーケティングの勉強の仕方
「スポーツビジネスについて勉強してみたい」という人に向けて、スポーツマーケティングを学ぶ方法について紹介します。
もちろん、知識がなくても就職できる企業はあります。しかし、専門知識は学習に時間がかかるため、前もって勉強しておくことをおすすめします。
8-1. 大学で学ぶ
1つ目の方法は、スポーツビジネスについて学べる大学に進学することです。特に、学習への意欲や本気度が高い人にオススメの方法です。
大学に行けば、専門知識をプロの教授から直接吸収できます。そのため、就職直後から即戦力になれることが期待できます。
スポーツビジネスに興味のある高校生や、時間に余裕のある人は、ぜひ大学への進学を検討してみてください。下記の記事に、スポーツマーケティングを学べる大学がまとめられています。
【2021年版】スポーツビジネスやマネジメントを学べる大学一覧
8-2. 書籍で学ぶ
大学では専門知識を深く学べますが、「大学に行く余裕なんてない」「そこまでガッツリ学ぶ必要はない」という人も多いでしょう。
そんな人におすすめなのが、書籍を使った独学です。書籍による学習は、手軽に基礎知識をインプットできるのが嬉しい点です。
9. スポーツマーケティングの年収事情
スポーツマーケティング業界全体の平均年収について、具体的なデータはありませんでした。
ただ、株式会社インターナショナルスポーツマーケティングの平均年収についてはデータがあります。
キャリコネによると、インターナショナルスポーツマーケティングにおける35歳男性の平均年収は「540万円」だということ。
他のマーケティング領域と大きな差はないでしょう。
10. スポーツマーケティングの将来性
今後は、スポーツとデジタルの融合が今以上に進んでいくと予想されます。この傾向を象徴するのが「東京五輪」の開催です。
東京五輪は完全無観客で行われ、競技はインターネットやテレビで完全配信されました。
当初は「観客がいないなんて五輪じゃない!」という声もありましたが、結果的に日本を含め世界中が熱狂することとなりました。
東京五輪の成功により、「スポーツのデジタル化」はより一層進んでいくはずです。
11. まとめ
ここまで、スポーツマーケティングの基礎知識について解説してきました。
コロナウイルスが流行したことで、多くのイベントが自粛を求められています。一方で、スポーツはそんな状況の中でも多くの人々の心を動かし、熱狂させています。
スポーツの力は、不況に苦しむ企業にとって大きな武器になる可能性を秘めています。企業の人やスポーツチームを運営している人は、ぜひスポーツの能力の利用を検討してみてください。